人間よりも、
コンピュータと話すほうが楽
機械に例えられるのは心外? いや、自覚はある。「人と接するのは得意じゃないんですよね……コンピュータと対話しているほうが楽です」と言い放つ姿も涼しげだ。それくらい寡黙で、冷静で、合理的で、ロジカル。タフで難易度の高いタスクも、感情に左右されず黙々と「Mission Complete」し続ける最強のパーフェクト・マシーン。「コミュニケーション大好き!」な人間が多いKECにおいては、かなり異彩を放つ存在かもしれない。
だが、誤解してはならない。そのマシーンには、血が通っている。夢を見ている。KECが作り出す教育の未来に、自らの存在意義を重ねている。そして何より、実はいい表情で笑う。マシーンの名は、松永裕。システム開発部門を担うCTOだ。
三重県の山あい。畑や田んぼが広がり、風が稲穂を揺らす音が響く。幼い彼は、そこで泥だらけになりながらザリガニを捕まえ、跳ねまわるカエルを追いかけていた。一方で、時代の変化や技術の革新は、少年に新たな刺激を与えていく。折からのファミコンブームの影響もあって、TVゲームにハマったのだ。やがてプレイするだけでは飽き足らず、「自分で創ってみたい」と思うようになった。かつて泥にまみれていた手には、後に人生の相棒にして武器ともなるキーボードが。中学生になるころには、「プログラマーになって、自分の会社を立ち上げる」と周囲に公言するようになっていた。