わたしは、わたしのままでいい。
あなたも、あなたのままでいい
母は言った。「困っている人を助けなさい。間違えたら素直に謝りなさい。何かしてもらったら、ありがとうと言いなさい。いつもニコニコしていなさい」。意志を強く。凛として柔らかく。その教えは血となって今も体を流れているし、藤田優子が藤田優子たるアイデンティティでもある。
しかし藤田は言う。「私なんてもう、コンプレックスのかたまりですよ!」。新卒で個別指導部のスタッフとして入社。教室長、ブロック長、教務部長などを歴任し、わずか10年強で人事部執行役員にまでなった今でも、肩書きや社会的立場で見られることは居心地が悪くて仕方がない。「いや、だからそんなエライ人間じゃないんですって!」とむずがゆそうに身をよじらせて主張する。自分をサゲる言葉をここまで清々しく、ハイテンションで言い切る女性も珍しい。ちなみに将来の夢は「スナックを開くこと」だ。
だがその根底には、ゆるがない想いがある。「わたしは、わたしのままでいい。あなたも、あなたのままでいい」。「人事部執行役員の藤田」ではなく、単なる「藤田」として見て欲しいし、相手にもそんなふうに接したい。描いているのは「自分が自分でいられて、自分で考え、行動し、決められる世界線」だ。これは、そんな藤田のシンデレラ・ストーリーである。